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【~「寒さ」が生み出す極上の甘口ワインとは!?~】
【~「寒さ」が生み出す極上の甘口ワインとは!?~】
皆さん、こんばんは。井上ワイナリー広報担当の石関華子です。
さて、今年の冬は暖冬と言われていますが、それでも朝晩はやはり冷え込みが一段と厳しいですよね。
ところで、世界にはこの「寒さ」を利用して造られるワインがあるのをご存知でしょうか?
それが、今回のコラムでお話しする、「アイスワイン」と呼ばれるワインです。
アイスワインとは、凍結した状態のブドウから造られる甘口ワインのこと。
凍結したブドウの果汁を搾ろうとすると、ブドウに含まれる水分は凍ったままですが、水よりも氷点の低いエキス分だけが凍らずに流れ出ます。
こうして、エキス分の凝縮した濃厚な甘さの果汁が得られ、その果汁を発酵して造るので、アイスワインは甘口のワインに仕上がるのです。
とはいえ、凍結したブドウの実から取れる果汁の量はごくわずか。
一房のブドウから取れる果汁の量は、ティースプーン1杯分程度ともいわれています。
そのため、アイスワインは大変希少なワインなのです。
アイスワイン用のブドウの収穫は、12月~2月の間、外気温がマイナス8度以下の時に手作業でおこなわれます。
収穫作業が始まるのは、まだ薄暗い明け方から。
朝日が照ってくると気温が上がり、ブドウがとけてしまう恐れがあるからです。
「寒いの苦手。」
「朝は苦手。」
などとは言っていられません…。
ところでアイスワインが誕生した背景には、面白いエピソードがあります。
18世紀末、ドイツのフランケン地方の農村を寒波が襲い、完熟していたブドウが凍ってしまいました。
当時は凍ったブドウは処分するのが当たり前だったところ、「もったいない」と凍ったブドウからワインを造ってみると、芳醇で濃厚な甘さのワインができたのです。
つまり、アイスワインとは、もともとは偶然の産物だったわけですね。
その後、アイスワイン造りはドイツ各地や隣国のオーストリアに伝わり、さらなる安定供給に向け、カナダへと伝わります。
そのような経緯から、現在は「アイスワイン」という名称が国際的な登録商標となっており、ドイツ、オーストリア、カナダの3国で生産されたもの以外のワインは、「アイスワイン」を名乗ることができません。(※1)
「寒いのはもうこりごり!」と思ったら、極上の甘さを備えたアイスワインを飲んでみてはいかがでしょうか。
素晴らしいワインを生み出してくれる寒さに対して、感謝の気持ちを感じられるようになるかもしれません。
※1:ドイツ、オーストリア、カナダの3国以外でも、またこれらの国々においても、人工的にブドウを凍らせる「クリオ・エキストラクシオン」という製法によって、アイスワインが造られていることがあります。